英語の勉強が好きな人や留学経験のある人、ワーホリ経験者など自分の語学力に自信がある人などなど、ご自身の語学力を生かした仕事をしたいと考える方も多いと思います。
また英語の勉強を頑張っている人の中には、英語力をつけてキャリアアップしたい、転職したい!と考えている方もいるでしょう。
それでは 語学力、特に英語力を生かした仕事って、どういったものがあるのでしょうか?
企業は「英語が出来る人材」をどのように評価しているのでしょう?
そのあたりの気になるお話を、20年以上もビジネスパーソン・企業向けの英語研修に携わり、現在は社会人向けフィリピン留学事業に携わっているYukoさんに伺いました!

Yukoさんプロフィール

ビジネスパーソン・企業向けの英語語学研修事業でディレクターを務め、10年ほど前からはフィリピンに英語留学される方のお世話をしています。
今回は私の経験から、英語力を巡るビジネス業界の現実、そして企業側はどういった人材を求めるかについて、お話したいと思います。
英語力を生かして企業で働く~求められる人材は?~
バブル経済が破綻し、少子高齢化に伴って、どんな業種でもほとんどの日本企業は海外にそのマーケットを求めざるを得ない状況になっています。
海外に進出するわけでなくても、国内に外国からの居住者や労働者、観光客がふえてくると、日本語だけでは対応できないのは明白な事実です。
現に日本国内にしか物件を所有していない、賃貸不動産大手の某社も社員の英語研修が大きな課題となっており、私もその企業の社員向け英語教育に関わった経験があります。
私がアメリカの大学を卒業した30年近く前は、実はそれほど英語が話せる人の需要はなく、むしろ専門学校出身くらいの扱いでした。
英語力を生かせる仕事と言えば、いわゆる英語屋さんの仕事くらいしかありませんでした。
英語屋さんというのは、書類の翻訳や海外出張での通訳といった仕事です。
ところがインターネットが完全に普及し、ヒト・モノ・カネがものすごいスピードで世界中を移動するようになりだした15年くらい前から、日本国内での英語人材を巡る状況は大きく変わってきました。
現在、大手企業が求めているのは、
- 仕事は当たり前にできてさらに英語力がある人
- 技術職プラスアルファ英語力(英語のできるエンジニアなど)
など、英語力プラスαをもつ人材で、ただ英語ができるだけの英語屋さんはそれほど歓迎されません。
企業の英語研修でも新人を大挙して送るという時代ではなく、むしろ中堅層で仕事はできる英語ができないという人たちを「なんとかしてくれ」と送るようになっています。
英語ができればいいという時代ではなく、まずはその人の経験、知識ありきで、プラスアルファの要素としての英語が求められるのです。
そのため、厳しいようですが、英語しか武器がないというような人は「社員全員が全く英語が出来ない」という企業くらいしか活躍の場所がありません。(そもそもそんな企業は、おそらく全く英語を必要としないので、結局ほとんど活躍の場がないということです。)
私の時代から現在に至るまで、英語を身に付けるためにワーホリ留学、語学留学をするのは人気ですが、近年では就職の面接でワーホリ中に何をしていたのか?語学留学で英語以外に何を学んだのか?を突っ込んで訊ねるという人事担当者も多く、「留学中に英語以外に何を得たのか?」という質問にしっかり答えられないと、留学経験自体はほとんど武器になりません。
また大学の正規課程に留学していた人は英語が出来るのは当たり前という前提で、「留学先の大学で何を勉強してきたのか?」をしっかり評価されます。
ハッキリ言って、英語力だけでよい職につけるということはもはやないと思ったほうがいいでしょう。
英語屋さんとして仕事を求める場合にも、秘書検定やなんらかの事務職の知識が必要です。
それでは英語力を生かした仕事をしたい人はどうすればいいのか?
それは逆説的なことですが、英語以外の勉強を頑張ることです。
英語が出来るのは当たり前として、それ以外の能力に秀でている人、例えば
- 英語が出来てプログラミングもできる。
- 英語が出来て中国語もできる。
- 英語が出来てマネジメントの経験がある。
こういった人材が、いま企業が求めている人材です。
英語力を生かして海外で働く~ブラック雇用に注意~
英語力を生かして仕事をするといえば、海外で働くという選択肢もあります。
英語力を生かして海外の企業で活躍するなんてなんだか格好いいイメージですが、海外就職をする際は注意しないとブラック企業ならぬブラック雇用をされてしまう場合があります。
ブラック雇用とは、企業自体は正社員に充実した福利厚生や働きやすい労働環境を提供しているものの、そういった恩恵を受けることが出来ないような雇用形態でその企業に採用されることです。
海外では、「現地採用」という言葉で安く人材を確保する企業が増えており、特に東南アジアでは日本国内の新卒以下の給料で働いている人が沢山います。
日本国内では優良企業として名の知れた会社でも、現地支社では事情が異なるので注意が必要です。
海外駐在員の場合には、ある程度身分や福利厚生なども保証されていて、駐在手当も十分に出るところがほとんどですが、語学留学の延長で現地採用とされてしまうと、きちんとした健康保険もなく、休みも保証されないブラック雇用に陥って抜け出せないということもあり得ます。
現地採用で働く場合には、まず働けるビザが提供されるかどうか、住居手当もしくは寮などの有無、有給休暇、健康保険など福利厚生が現地の労働法にかなっているかどうかなど、詳細に確認するようにしましょう。
特にビザをスポンサードしてくれない企業は要注意です。
しかし逆にいうと現地採用はとにかく人件費を安く抑えたいという理由で行っている場合があるので、日本の本社だと採用されないような学歴、経歴でもチャンスがあります。
現地採用で最初はブラック雇用で働いていたけど、能力が認められて正社員待遇になったという話も聞きます。
ただそのような場合でも、最低限ビザのサポートをしてくれるかどうか?は確認しておいたほうが無難です。
労働ビザがないのに働いていたとなると、最悪身柄を当局に拘束され日本に強制送還、そして二度とその国の地を踏めません。
語学力を生かしたいから、とにかくそこに住みたいからと、雇用してもらえるならなんでもいい、という切羽詰まった姿勢では採用する企業側に足元を見られます。
ちなみにが海外就職する場合でも、最初に述べた日本国内企業と同じく語学はあくまでもプラスアルファです。
現地企業であなたがどんなことができるのかしっかり考えて求職してください。
英語力を生かして自分でビジネスする!
かつて英語屋さんとして企業で活躍していた人たちは、現在では翻訳業や通訳業で働いています。
この二つの仕事は派遣会社やアウトソーシング仲介業者を通して働くことが多く、翻訳や通訳をしてもらいたいクライアントが派遣会社・アウトソーシング会社に仕事を出す→会社が英語屋さんに仕事を打診するという流れです。
英語屋さんたちはスケジュールと条件さえあえば好きな時に好きなように働けるというメリットがありますが、中間マージンを取られるので報酬が低いというデメリットがあります。
こういった中間業者を通して仕事を受注して経験を積み、独立してフリーランスとして直接クライアントから仕事をもらう英語屋さんもいます。
海外でフリーランスの通訳や翻訳、ガイドをしている人もいますが、この場合は滞在国のビザの問題があります。
当然ですが、一般的な観光ビザでは仕事ができません。
通訳として働いてみたいと考えている人は、日本で通訳ガイドの資格を取ることも考えてみましょう。
最近は東南アジアや中近東からの富裕層の観光客も増えており、それなりの需要が見込めるようです。
いずれにせよ、いきなりフリーランスになるのではなく、数年でもどこかに属して経験を積む必要があります。
すでに人脈があり、仕事を受注できる環境であればこの限りではありませんが。
翻訳や通訳以外で英語力を生かせる仕事と言えば、英会話の先生があります。
小学校からの英語教育が義務化され、親の子どもへの英語教育熱は高くなっています。
子ども好きなら英語教室や塾を開いたり、大人のビギナーや高齢者向けの英会話教室を開くという手もあります。
ビギナーや高齢者はいきなり外国人に習うというのは敷居が高く、むしろ日本人講師のほうがいいと考える人は少なくありません。
まとめ
英語力を生かす仕事として3パターンを挙げてみました。
いずれの場合にも言えるのが、英語だけ出来る人の需要はあまり高くないということです。
私が英語教育に携わり始めた20年以上前は英語が出来る人材は貴重な存在でしたが、英語はできて当たり前の時代が来つつあります。
自分の武器が英語だけになってしまわないように、英語プラスアルファで自分が何ができるかを考えておきましょう。
この記事を書いたのは
米国の大学を卒業後、日本の企業向け英語研修事業でプログラムディレクターを10年以上務める。10年ほど前からはフィリピンに移り、社会人向けフィリピン語学留学事業に携わる。ビジネスパーソンを巡る英語事情を20年以上見続けてきた経験から、英語に関するコラムを多数執筆中。